今週のひとつ 第24回

 

 

シソンヌ「インドカレー

「インドカレー」 - シソンヌライブ [deux] - YouTube

 

ネタバレ含むので、先に見てね。

 

えー、シソンヌと言えば、

2014年のキングオブコント王者ですね。

最近は、じろうさんがLIFE(NHKのコント番組)に出てるみたいで、

数本コントがアップされてましたね。

「一見悪徳に見えてシリーズ」のやつ。

まあ上手ですよね、じろうさんは。

悪徳シリーズも初見誰か分からなかったもんね。

いやそれは、髪型も違うし眼鏡もかけてなかったからかもだけど。

キングオブコントでのタクシーのネタとか、臭いラーメンのネタとか、

僕は当時そんなに面白いとは思ってなかったんですけど、

ライブのネタ見たら結構好きなものが多かったので、

単にテレビ向けのネタが相性悪かったのかなって思った。

 

で、まあライブのネタ見ると、

セットもシンプルだし、

小道具もそんな使わないし、

ミニマルコントが好きな僕としては、

それだけで好感が持てるんですけど、

フライヤーもおしゃれだし、

ライブタイトルもかっこいいし、

よしもとにしては良いなあと思います。

 

結局、僕があまり好きになれなかった、

タクシーと臭いラーメンのネタなんですが、

あれは、いわばキャラコントなんですよね。

変な人が変な言動したら面白いよねっていうネタです。

まあ一概に僕がそれを嫌いとかそういうことではないんですけど、

振り切るなら振り切っちゃってくれた方がいいというか、

シソンヌのそれは、どこかリアリティが残るので

(恐らくそれはわざと残されているんですけど)

どことなく、見ていて自分の居心地が悪くなる感じがします。

没入しきれず、かつ傍から見てる気持ちにもなれないというか。

それは、シソンヌに限らず、色んな芸人さんでも起こりうることです。

まあ、そういうものでも好きなコントはあるんですけどね。

相性が悪かったに尽きます。

キャラコントで振り切ってる、っていうと

ロバートとかですね。

何も考えずにゲラゲラ笑えますからね、はい。

 

が、シソンヌは会話コントもできると来た。

“会話コント”っていうのは、あくまで僕の定義ですけど、

特殊な登場人物、特殊な場面設定、劇的な展開を用いず、

会話を主として成立させるコント

を僕は、そう呼んでいます。

バナナマンとか、おぎやはぎはこのあたりがめちゃくちゃ上手いです。

会話だけで笑わせるというのは、実は超大変なんです。

だって、本人たちは面白くしようと思って会話してないんだもん。

セリフひとつひとつにその効果はなくて、

文脈を読み取らせて初めて面白さが生まれるわけです。

インドカレー」は、登場人物にやや特殊性を感じますが、

この店長はボケではないので、そう深く考えなくていいでしょう。

とにかく圧巻なのが、じろうさんの演技力。

こんなにあっさりとインド人っぽくインド人できる人いる?

そうです、会話コントに重要なのは、他でもなく演技力なんです。

それこそ、“劇的な展開”に必要なそれとは異なるタイプのリアリティ。

会話はナマモノです。

いつだって新鮮で、そのテンポや間は再現しようと思っても

なかなか難しいものなのです。

それをインド人でやってるんですよ。

しかも会話コントだから、“インド人であること”は観客の意識の中心から逸らせないといけない。

 

あと、会話コントには状況説明が出来ないという欠点があります。

あくまで一部を切り取ったものですからね。

説明しすぎない程度に、セリフで情報を小出しにする。

あとは演技力ももちろん必要。

セットがミニマルですから余計に難しいですね。

それを見越して、ちゃんと序盤は観客の状況把握にたっぷり時間を取ってます。

そして皆が分かりかけてきた頃に会話が動き出して、

そして畳みかけるように、「見入るやつじゃねえから」が入る。

めちゃめちゃ面白くないですか、「見入るやつじゃねえから」。

先ほども言いましたが、会話コントはそのセリフひとつひとつが効力を持つことは少ないです。面白くしようと思って言ってないから。

でもそれが、文脈の中に置かれた時、とんでもない力を持つことがあります。

僕はそれが、会話コントの一番の魅力だと思います。

これこそワーディングのセンスが問われる最たる部分で、

なかなか意図的に探そうと思っても難しいわけですよ。

 

なんだか長々と書いてしまいましたが、

笑いの分析は楽しいですよ。

 

そんなわけで今回はここらで。