今週のひとつ 第15回
ステージマジックは大きくふたつに分かれていて、
大きな仕掛けで人や動物を現象の材料として使うイリュージョンと、
スライハンドで物を出したり消したり、変化させたりするマニピュレーションがあります。
マニピュレーションで多いのは、やはりカード。
カードって、手に隠せそうっちゃ隠せそうだけど、コインとかタバコほど余裕ではなさそうじゃないですか。そこら辺の塩梅がちょうどいい気がします。
1枚出しも出来るし、扇状に広げれば見た目も大きくなる。色を変えたり、紙吹雪になったり、見た目の変化も楽しいです。
演技者の手つきもそれはそれは美しく、ヒラヒラと落ちていくカードたちもまた、哀愁があります。
本当にテクニックがものを言う演目なわけですが、必要なのはそれだけではありません。
どこかで何度か言っている気はするんですが、
表情ですね、表情。
表現力と言った方が正しいのかもしれませんが、なんでしょうね、表情なんですよ。
Yu Hojin
FISM2012のステージ部門グランプリです。
韓国人。181cmのナイスガイ。
ステージのグランプリはアジア人初だったそう。
しかも当時若干20歳。最年少受賞です。
いやあ、にしても美しい演技ですね。
テクニックはもちろんなんですが、すべての所作に神経研ぎ澄まされた感じがしますね。
そして表情ですよ表情。カード出すだけでこんな顔できますか。
もののけ姫ピアノアレンジを使うあたりも好き。
あとは、少し専門的な話になりますが、ロードがとてもスムーズなんですね。
ロードはなるべく見られたくないので、出来るだけ早く済ませてしまいたいところな訳です。
ここまでゆっくりとした演技をしていると、なかなかロードを堂々と行うのは厳しく見えますが、
彼の演技は、観客が見入るだけの力があります。観客が演技に惹きこまれた時、観客は「見せられている部分」にしか注目できなくなります。ゆっくりとした演技なら尚更です。
彼もそれが分かっているからこそ、堂々とロードが出来るし、余裕があるからスムーズなんです。
他に特筆すべきは、[4:55]あたりからの特定色のファンプロダクション。
意味が分かりません。どうやって出すんだこれ。
更には、その後のバックパームからフロントパームへのシフト。さらにもう一度バックパーム。やばいです。
というわけで今回は美しいマニピュレーションでした。