今週のひとつ 第15回

 

 

 

ステージマジックは大きくふたつに分かれていて、

大きな仕掛けで人や動物を現象の材料として使うイリュージョンと、

スライハンドで物を出したり消したり、変化させたりするマニピュレーションがあります。

 

マニピュレーションで多いのは、やはりカード。

カードって、手に隠せそうっちゃ隠せそうだけど、コインとかタバコほど余裕ではなさそうじゃないですか。そこら辺の塩梅がちょうどいい気がします。

1枚出しも出来るし、扇状に広げれば見た目も大きくなる。色を変えたり、紙吹雪になったり、見た目の変化も楽しいです。

演技者の手つきもそれはそれは美しく、ヒラヒラと落ちていくカードたちもまた、哀愁があります。

本当にテクニックがものを言う演目なわけですが、必要なのはそれだけではありません。

どこかで何度か言っている気はするんですが、

表情ですね、表情。

表現力と言った方が正しいのかもしれませんが、なんでしょうね、表情なんですよ。

 

 

Yu Hojin

youtu.be

 

FISM2012のステージ部門グランプリです。

韓国人。181cmのナイスガイ。

ステージのグランプリはアジア人初だったそう。

しかも当時若干20歳。最年少受賞です。

 

いやあ、にしても美しい演技ですね。

テクニックはもちろんなんですが、すべての所作に神経研ぎ澄まされた感じがしますね。

そして表情ですよ表情。カード出すだけでこんな顔できますか。

 

もののけ姫ピアノアレンジを使うあたりも好き。

 

あとは、少し専門的な話になりますが、ロードがとてもスムーズなんですね。

ロードはなるべく見られたくないので、出来るだけ早く済ませてしまいたいところな訳です。

ここまでゆっくりとした演技をしていると、なかなかロードを堂々と行うのは厳しく見えますが、

彼の演技は、観客が見入るだけの力があります。観客が演技に惹きこまれた時、観客は「見せられている部分」にしか注目できなくなります。ゆっくりとした演技なら尚更です。

彼もそれが分かっているからこそ、堂々とロードが出来るし、余裕があるからスムーズなんです。

 

他に特筆すべきは、[4:55]あたりからの特定色のファンプロダクション。

意味が分かりません。どうやって出すんだこれ。

更には、その後のバックパームからフロントパームへのシフト。さらにもう一度バックパーム。やばいです。

 

というわけで今回は美しいマニピュレーションでした。