レビュー #ブラックリリィと白百合ちゃん

 

 「だめだめっ 私は普通!普通なんだから!」

 

ふつう【普通】

①いつでもどこにでもあって、めずらしくない・こと(さま)。

②ほかとくらべて特に変わらない・こと(さま)。

③特別ではなく、一般的である・こと(さま)。

大辞林 第三版より)

 

「普通のもの」と「普通でないもの」は線引きされており、「普通でないもの」は「普通のもの」と同じ枠組みに取り込まれることはない。

「普通でないもの」は、通常避けられ、排除される傾向にある。

これは、自分にとって未知なるもの、自分とは異質なものから逃げようとする心理が働くためであって、当然といえば当然なのだ。

そして、誰かから避けられたくない、というのも当然の心理である。マズロー欲求階層説に倣えば、社会欲求、上の次元ならば承認欲求が働くためである。これらは欠乏欲求に属するため、満たされないと我々は不安を感じてしまうからだ。

そこで我々は、「普通」の人間として、「普通」の集団に属そうとし、「普通」の振る舞いをする。そこで、より「自分が普通である」と認識するようになる。

「普通」であることが、普通。

「普通」であることが、正しい。

「普通」であることは、正義。

「普通」であることは、善。

だから人間は、「普通でありたい」のだ。

 

しかし、悲しいことに、人間は「普通」であるだけでは満足できない。

「普通」であるだけでは、自我を確立できず、マズローのいう自己実現欲求も満たされない。

得てして、人間は「普通」の海に溺れ、個性が埋没してしまうことを恐れる。

 

個性化と社会化、その両立は、人間に孕むもっとも身近で、もっとも大きなパラドクスと言える。

 

 

百園優凛は、普通の女子高生だ。

f:id:chimishira:20170605223632j:image優凛(ゆり)。品行方正でまっすぐな性格らしい

 

地元(小さい島)の学校が廃校になり、母が通っていた寮付き女子校へ転入。

母曰く、厳格で規律を尊び、大和撫子を育成するような学校。

それを聞いて、期待に胸を膨らませた優凛であった。

が、 

f:id:chimishira:20170605223708j:imageエデンの園

違かったらしい。

 

寮のルームメイト、リリィ・マリーナ。

お察しの通り、実は理事長である。

規律よりも自由を重んじる、ということで学校はこんな感じに。 

 f:id:chimishira:20170605231552j:imageリリィ。金髪ツインテ白ニーソ貧乳ロリである

 

そしてリリィのペット、桜。 

f:id:chimishira:20170605223743j:image優凛たちの先輩。滴っているのは牛乳である。あしからず

 f:id:chimishira:20170605223803j:imageついさっきまでリリィの足を舐めていた桜。舐められていたリリィ

 

優凛は、普通の女子高生だ。

実家は武芸道場で、「正しくあれ、強くあれ、弱気ものを助けろ」と育てられた。

そんな彼女が、こんな状況を黙って見ていられる訳もなく、 

f:id:chimishira:20170605223817j:imageどんだけ良い子やねん

 

自らの正義を振りかざし、自分と同じように「普通でありたい」子を助けるために立ち上がった!!!

が、 

f:id:chimishira:20170605223853j:image敗北

だめだったらしい。

 

自分が正しいと思っていたことを否定されたとき、人間は自分をも否定されたような錯覚に陥る。

優凛とて例外ではない。

自分では普通だと思っていたものが、普通ではなくなった。

自己実現の達成はおろか、他者承認を得られず、社会欲求も満たされない。

まさにアイデンティティの危機である。

優凛は間違っていたのだろうか・・・・・・

 

f:id:chimishira:20170605223912j:plain

   f:id:chimishira:20170605223929j:image

 

その後、桜から、リリィの話を聞いた優凛。

f:id:chimishira:20170605223955j:image やはり正義感は本物

 

そして、彼女は「普通」の殻を破る決意をしたのだった。

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『ブラックリリィと白百合ちゃん』(鳳まひろ著/ヤングキングコミクス)(既刊1巻)

 

鳳先生はエロ同人出身でして、今作が初の一般漫画。調べたところ普通のエロ漫画描いてましたね。

「おおっ!普通のエロ漫画じゃん!」って思いました。

というのは、リリ百合って1巻だけでカロリーが結構高いんですよ。

今回触れたような人間性がよく描写されてるし、人物像の背景も意識されてるし、何よりこの巻だけで起承転結が上手くまとまっている(今回記事に載せたのは第1話の内容。ここからもうひと展開ある)。もうこれで完結していいよ、とさえ思ってしまう。

こんな人が普通のエロ漫画描いてるとか想像できなくてですね。

演出面に関しても特に申し分ない。若干コマ間で飛びすぎかなという繋ぎはありましたが。

あと絵が少し不安定。基本的に上手いんですけど、バランスがとれてない部分が多々あり。あと脚の角度。

まあでもエッチなシーンはめちゃ上手いのでOK! 

f:id:chimishira:20170605224108j:imageエデンの園(2回目)

 

f:id:chimishira:20170605224050j:plain優凛のクラスメイトによる唾液交換シーン@食堂(生々しすぎるので規制)

 f:id:chimishira:20170605224037j:plainこのあと滅茶苦茶ちょっとセックスした(マジ

 

ちなみに、レズは「普通ではない」というのが僕の見解。

生物におけるプログラムには反逆しているので。

でもだからこそ、そんな天命をも超えて愛し合うなんて、こんなに素敵なことありますかね。

だから僕は百合が好き。

 

空腹を満たすために食べ物が必要であるように、

疲れた体を癒やすために休息が必要であるように、

私たちが生きるために必要なのは、

醜さではなく百合なのだ。

アブラハム・マズロー