レビュー #ブラックリリィと白百合ちゃん
「だめだめっ 私は普通!普通なんだから!」
ふつう【普通】
①いつでもどこにでもあって、めずらしくない・こと(さま)。
②ほかとくらべて特に変わらない・こと(さま)。
③特別ではなく、一般的である・こと(さま)。
(大辞林 第三版より)
「普通のもの」と「普通でないもの」は線引きされており、「普通でないもの」は「普通のもの」と同じ枠組みに取り込まれることはない。
「普通でないもの」は、通常避けられ、排除される傾向にある。
これは、自分にとって未知なるもの、自分とは異質なものから逃げようとする心理が働くためであって、当然といえば当然なのだ。
そして、誰かから避けられたくない、というのも当然の心理である。マズローの欲求階層説に倣えば、社会欲求、上の次元ならば承認欲求が働くためである。これらは欠乏欲求に属するため、満たされないと我々は不安を感じてしまうからだ。
そこで我々は、「普通」の人間として、「普通」の集団に属そうとし、「普通」の振る舞いをする。そこで、より「自分が普通である」と認識するようになる。
「普通」であることが、普通。
「普通」であることが、正しい。
「普通」であることは、正義。
「普通」であることは、善。
だから人間は、「普通でありたい」のだ。
しかし、悲しいことに、人間は「普通」であるだけでは満足できない。
「普通」であるだけでは、自我を確立できず、マズローのいう自己実現欲求も満たされない。
得てして、人間は「普通」の海に溺れ、個性が埋没してしまうことを恐れる。
個性化と社会化、その両立は、人間に孕むもっとも身近で、もっとも大きなパラドクスと言える。
百園優凛は、普通の女子高生だ。
優凛(ゆり)。品行方正でまっすぐな性格らしい
地元(小さい島)の学校が廃校になり、母が通っていた寮付き女子校へ転入。
母曰く、厳格で規律を尊び、大和撫子を育成するような学校。
それを聞いて、期待に胸を膨らませた優凛であった。
が、
違かったらしい。
寮のルームメイト、リリィ・マリーナ。
お察しの通り、実は理事長である。
規律よりも自由を重んじる、ということで学校はこんな感じに。
リリィ。金髪ツインテ白ニーソ貧乳ロリである
そしてリリィのペット、桜。
優凛たちの先輩。滴っているのは牛乳である。あしからず
ついさっきまでリリィの足を舐めていた桜。舐められていたリリィ
優凛は、普通の女子高生だ。
実家は武芸道場で、「正しくあれ、強くあれ、弱気ものを助けろ」と育てられた。
そんな彼女が、こんな状況を黙って見ていられる訳もなく、
どんだけ良い子やねん
自らの正義を振りかざし、自分と同じように「普通でありたい」子を助けるために立ち上がった!!!
が、
敗北
だめだったらしい。
自分が正しいと思っていたことを否定されたとき、人間は自分をも否定されたような錯覚に陥る。
優凛とて例外ではない。
自分では普通だと思っていたものが、普通ではなくなった。
自己実現の達成はおろか、他者承認を得られず、社会欲求も満たされない。
まさにアイデンティティの危機である。
優凛は間違っていたのだろうか・・・・・・
その後、桜から、リリィの話を聞いた優凛。
やはり正義感は本物
そして、彼女は「普通」の殻を破る決意をしたのだった。
『ブラックリリィと白百合ちゃん』(鳳まひろ著/ヤングキングコミクス)(既刊1巻)
鳳先生はエロ同人出身でして、今作が初の一般漫画。調べたところ普通のエロ漫画描いてましたね。
「おおっ!普通のエロ漫画じゃん!」って思いました。
というのは、リリ百合って1巻だけでカロリーが結構高いんですよ。
今回触れたような人間性がよく描写されてるし、人物像の背景も意識されてるし、何よりこの巻だけで起承転結が上手くまとまっている(今回記事に載せたのは第1話の内容。ここからもうひと展開ある)。もうこれで完結していいよ、とさえ思ってしまう。
こんな人が普通のエロ漫画描いてるとか想像できなくてですね。
演出面に関しても特に申し分ない。若干コマ間で飛びすぎかなという繋ぎはありましたが。
あと絵が少し不安定。基本的に上手いんですけど、バランスがとれてない部分が多々あり。あと脚の角度。
まあでもエッチなシーンはめちゃ上手いのでOK!
エデンの園(2回目)
優凛のクラスメイトによる唾液交換シーン@食堂(生々しすぎるので規制)
このあと滅茶苦茶ちょっとセックスした(マジ
ちなみに、レズは「普通ではない」というのが僕の見解。
生物におけるプログラムには反逆しているので。
でもだからこそ、そんな天命をも超えて愛し合うなんて、こんなに素敵なことありますかね。
だから僕は百合が好き。
空腹を満たすために食べ物が必要であるように、
疲れた体を癒やすために休息が必要であるように、
私たちが生きるために必要なのは、
醜さではなく百合なのだ。