さいしょでさいごのパリンドロ #1
さいしょでさいごのパリンドロ
#1「有馬鞠愛の今井舞への有り余る愛」
鞠愛「いやあ、皆で初詣なんて、部活っぽいですねー!」キラキラ
京子「集合時間に30分遅れておいて、よく言うわ」
鞠愛「だから謝ったじゃないですかあ!」
海華「まあまあ、バスが混んでたんじゃ仕方ないよ、京子」
京子「そうだけど……」
このみ「ハイッ!新年早々ピリピリしてても良いことないですよ、京子先輩。せっかくなんですから、ワイワイしましょ。ね?」
京子「このみが言うなら……」
鞠愛「じゃあ早速お賽銭だあ!」バッ
舞 「相変わらず元気ね」
鞠愛「だってお正月だよ?テンション上がっちゃうよねー!?」
鞠愛「あ!」
舞 「何」ビクッ
鞠愛「あー!!」
舞 「だから何」
鞠愛「大事なこと言い忘れてた!」
舞 「何よ」
鞠愛「今年もよろしくね!舞ちゃん!」
舞 「はぁ、何かと思えば…………」
舞 「…………よろしく」
京子「今年も、カセナンの生徒が巫女のバイトやってるわね」
海華「クズジョの子たちもやってるね」
真埜「可愛い、みんな」
このみ「京子先輩も、去年巫女さんのバイトやってたんですよね?」
京子「ちょっ、誰から聞いたのよ!?」
海華「教えちったー、エヘヘ」
京子「エヘヘじゃないわよ、もう!なんで言うのよ、もー!!もー!!!」ブンブン
海華「まだ丑年じゃないよ、京子」
海華「逆になんで言っちゃだめなのさ」
京子「は、恥ずかしいじゃない!なんとなく」
海華「そんなことないでしょー」
真埜「京子、似合ってた、巫女服が」
京子「う、うるさい、、、」カァァ
このみ「でもどうして、今年はやらなかったんですか?」
京子「巫女のバイト? いやそれがね、神社の神的催しを直で見れるかと思ったら、全然そんなことなかったのよ」
海華「所詮、バイトだからね」
京子「お仕事の前に、お清め的な何かがあるのかとも思ってたけど、からっきしだったわ」
真埜「京子は必要無さそう、お清め」
このみ「あー、なんか分かります!京子先輩はお清めしなくても、巫女さんとして充分ですよ!」
海華「こんな絵に描いたような大和撫子、なかなか居ないからね」
京子「そういう問題ではないでしょう……」
鞠愛「見て見て、舞ちゃん!」ジャラ
舞 「何よそれ」
鞠愛「何って、見れば分かるでしょ?5円玉ネックレスだよ」
舞 「見たまんまだわ」
鞠愛「昨日作ったんだ。糸を穴に入れるだけだったけど、さすがに45枚は骨が折れたね」
舞 「……なんで45枚なの」
鞠愛「ほら、“始終ご縁がありますように”っていうやつじゃん。舞ちゃん、知らないの?」
舞 「知ってる。だから聞いてんの」
鞠愛「???」
舞 「5円玉が45枚あったら、45円じゃないでしょ」
鞠愛「」
舞 「えーと、225円」
鞠愛「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
舞 「うるさい!うるさい!他の人もいるんだから」
鞠愛「やってしまった……やってしまったよ……」
舞 「9枚繋げればよかったものを。36枚無駄だったわね」
鞠愛「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
舞 「だから!」
鞠愛「うぇーん!じゃあ私の努力はなんだったの……!」グスン
舞 「マジ泣きしないでよ」
鞠愛「だってぇ……」
舞 「まあ、ほら、225円にも意味があるかもしれないし」
鞠愛「……例えば?」
舞 「た、例えば!? えーと、えーと、あ、“ふたにご縁がありますように”」
鞠愛「“ふたにご縁”って何?」
舞 「それは、ほら、あれよ。蓋よ。蓋をきっかけに幸運がー、とか。蓋で運気を逃さないー、とか……」
鞠愛「……他には?」
舞 「他!?他は、そうね、んー、にひゃくにじゅうごえんだから、にひゃく……にはく…あ、にはく!えー、にはく、にはくー、にー、じゆう……うん、“にはくにじゆうご縁がありますように”とか」
鞠愛「“にはくにじゆう”って何?」
舞 「旅行よ」
鞠愛「え?」
舞 「2泊。2泊3日の2泊。に、自由」
鞠愛「“2泊に自由”」
舞 「そうそうそう」
鞠愛「……なにそれ」
舞 「いや、だから、、、その、旅行した時に、2泊3日のね? で、その時に自由行動したら、こう、ご縁がありますようにって」
鞠愛「旅行って基本自由行動じゃない?」
舞 「ツアーとかあるじゃん」
鞠愛「あー……」
舞 「ま、まあ、そんなに語呂合わせひとつで運勢変わらないと思うし」
鞠愛「36枚は?」
舞 「………ん?」
鞠愛「無駄だった36枚も納めたほうがいいかな」
舞 「それは、鞠愛の自由にすれば?」
鞠愛「さんじゅうろく、み、み、みろく……みろく? “みろく”って聞いたことある」
舞 「弥勒なら知ってるけど」
鞠愛「弥勒って何?」
舞 「……歴史の授業で聞いた気がする。京子先輩に聞いてみなよ」
鞠愛「京子先輩」
京子「ん?何?」
鞠愛「弥勒って、神社に納めて大丈夫ですか」
京子「えーっと、ちょっと意味は分からないけど、弥勒っていうのは弥勒菩薩のこと?」
舞 「あ、そうです。弥勒菩薩」
京子「弥勒菩薩っていうのは、仏様よ」
海華「正確に言えば、“未来仏”って言って、今の仏様であるゴータマシッダールタ、つまりお釈迦様ね、その次に仏になるんだよ」
舞 「へえ、そうなんですか」
京子「で、その弥勒菩薩がどうかしたの?」
鞠愛「いや、実はかくかくしかじかでして」
海華「なるほどね」
京子「仏を神社に納めていいのか、ってことね」
鞠愛「そうなの?」
舞 「あなたそこまで深く考えてなかったのね」
海華「まあ、その辺は、ぶっちゃけ人によるかな」
京子「そうね」
京子「神仏習合って習った?」
舞 「一応は」
海華「そういう考えなら別にいいんじゃない?」
京子「ちなみに、2人は、この神社がどんな神様を祀ってるか知ってる?」
鞠愛「いやあ、全然」
舞 「考えたこともなかったですね」
京子「地元の神社が誰を祀ってるかくらい、知っておきなさいね」
海華「ははは!そんな人なかなかいないんじゃない?私だって知らないよ?」
このみ「私、知ってます!」バッ
海華「お、ここに来て出番の少ないこのみちゃん、満を持して登場」
このみ「校高丘を作った神様ですよね」ドヤァ
海華「へえー」
真埜「なるほど」
鞠愛「ふーん」
舞 「そうなんですね」
京子「違うわよ」
このみ「えええええ!?」
海華「満を持したのに」
真埜「まじ卍」
海華「神社で言うな」
京子「校高ノ神を祀ってるのは、うちの学校の近くにあるミニ神社」
舞 「そもそも校高ノ神なんているんですか」
京子「昔はお祭りやってたみたいよ」
舞 「はあ」
このみ「じゃあ、ここは何を祀ってるんですか?」
京子「見上ノ御神」
このみ「ミカミノミカミ?」
京子「そう」
鞠愛「どういう神様なんですか」
京子「向こうに見上山ってあるでしょ」
海華「名前あったんだ、あの山」
京子「あそこに神様が降り立ったのよ」
海華「どういう神様?」
京子「一応、天照大神の親戚みたいなポジションらしいけど」
海華「ポジションって……」
京子「いや、結構資料が嘘くさいのよね」
京子「一説によると、山に降り立った衝撃で天地がひっくり返ったらしいわよ」
海華「なんという一説」
このみ「じゃあ、今、私たちがいる地面は、昔は空だったんですか?」
京子「一説によると、それがそうでもないらしい」
海華「なんという一説」
京子「天地はひっくり返ったけど、その瞬間に天と地の概念もひっくり返ったらしい」
海華「ありゃりゃ」
京子「まあつまり、ひっくり返っても、ひっくり返ったことにはならなかったのよ」
舞 「変な話ですね……」
京子「だから、言ったでしょ。嘘くさい資料だって」
このみ「この土地の人が勝手に捏造したとか、ですか?」
京子「いや、神様自体はいたにはいたのよ。ただ出所がちゃんとしてないの」
鞠愛「じゃあ、私たちは、どこの馬の骨かも分からない神様に毎年お祈りしてたんですね」
海華「馬の骨じゃないのは確かだけどね」
海華「まあ、なんにせよ、大丈夫じゃない? 弥勒は」
真埜「ここにきてなんだけど、お賽銭の語呂合わせ、あんまり関係ないらしい」
海華「というと?」
真埜「お賽銭は、身の穢れを払うために投げるもの」
真埜「穢れをまとわせるの、銭に」
海華「じゃあ、45枚でも大丈夫ってことか」
真埜「むしろネックレスとして身に着けてたなら、全部納めた方がいいと思う」
海華「なるほど」
舞 「鞠愛」
鞠愛「舞ちゃん……」
鞠愛「これあげる」ジャラ
舞 「は?」
鞠愛「せっかく作ったネックレス、舞ちゃんに着けてほしい」
舞 「いや、話聞いてた? 穢れを払うって」
鞠愛「舞ちゃんなら、私の穢れもすべて受け入れてくれるでしょう?」
鞠愛「ねえ?」ギンッ
舞 「ヒィ!?!?」
海華「ヤンデレマリア発動したな」
京子「いまいちトリガーがよく分からなかったわね」
真埜「余計なこと言ったかな、私」
京子「鞠愛は落ち着いたかしら?」
舞 「甘酒飲ませて、なんとか……」
海華「おお!甘酒!そういえばまだ飲んでなかった」
海華「A!」バッ
真埜「M」サッ
海華「A!」バッ
真埜「J」サッ
海華「A!」バッ
真埜「K」サッ
海華「E!」バッ
京子「何よ、アマジャケって」
海華「塩鮭じゃないやつ」
真埜「もしくはamazarashiのCDジャケット」
このみ「先輩!大変です!」
海華「なんだなんだ」
このみ「鞠愛ちゃんが」
海華「再発か!?」
舞 「いや、再発ではないんですが」
鞠愛「ねえまいちゃーん、ちゅーしよ、ちゅー」トローン
海華「あー、甘酒で酔うタイプか」
京子「いつもより舞ちゃん愛が強いわね」
鞠愛「ねーえー!ック!私のネックレスもらっれーえー」
舞 「離れて」
このみ「まだ根に持ってるんですね、ネックレス」
鞠愛「ねー!ちゅー!ック、あー、じゃー、それともえっちすーりゅー?」
舞 「うるさい」
鞠愛「ねー、ック、いつもしてるみたいにー、ック、はげしーのしよーよー」
京子「あんたたち、そこまで進んでたの……」
海華「いつも激しいんだ」
このみ「お盛んなんだね……」
舞 「ご、誤解です!そんなの一回もありません!」グワッ
鞠愛「ック、わらしねー、さっきねー、ック、むこうでおへやあるのみつけたー」
舞 「それ神殿でしょ!」
鞠愛「あー!ック、まいちゃんのーむなもとはーまったいらできもちーいーなー」
舞 「!!」ブンッ
鞠愛「グエフッ」
海華「おー、クリティカール」パチパチパチパチ
真埜「見事なアッパー」パチパチパチパチ
京子「これは効いたわね」パチパチパチパチ
このみ「あはははは……」パチパチパチパチ
海華「さーて、お賽銭も済んだし、おみくじも引いたし、甘酒も飲んだし、これからどうしよっか」
真埜「カラオケ」
このみ「あー!皆でカラオケ行きたいです!」
海華「そっちのおみくじ幸薄い皆さんはー?」
京子「……どこでもいいわ」
鞠愛「……舞ちゃんと一緒ならどこでも」
舞 「……」
鞠愛「舞ちゃん」
舞 「何」
鞠愛「“小凶”、おそろいだね♡」
舞 「あんたも賽銭箱に投げてくれば良かったわ」
このみ「とりあえず、あっちに結んできたら?」
舞 「そうするわ」
舞 「」カシャ
鞠愛「なんでおみくじの写真撮ってるの」
舞 「だって、結んじゃったら、何書いてあったか忘れちゃうじゃない」
鞠愛「なるほど、じゃあ私も」カシャ
鞠愛「『願望:叶うが遅し、待人:来ず、失物:出ず、旅行:友と行きて吉、商売:売りて買わざるが吉、学問:努力せよ、恋愛:』」
舞 「言っとくけど、人に知られると運気下がるのよ」
鞠愛「えー?ちょっと早く言ってよ!」
舞 「さてと」
舞 「よいしょ」キュッ
鞠愛「よいしょ」キュッ
舞 「ちょっと、鞠愛」
鞠愛「ん?」
舞 「何してんの」
鞠愛「舞ちゃんが結んだおみくじに、私のおみくじ結んでるの」
鞠愛「これでずっと一緒だね……」ギンッ
舞 「」
真埜「買ってきた、見上餅」
海華「わーい」
京子「私、あんこー」
鞠愛「私はチョコで!」
海華「バジルでしょー」
真埜「イカスミ」
舞 「シナモン貰いますね」
このみ「ええー?胡麻チーズ残ってますよ?皆さん良いんですか?」
海華「いや、胡麻チーズはない」
京子「うん、それはない」
真埜「同じく」
舞 「人類史上、最大の過ち」
鞠愛「このみちゃん、味蕾ある?」
このみ「私これ好きなんだけどなあ……」
海華「なんか、くさいじゃん」
このみ「このくささがクセになるんですよ!」
海華「そうだろうか」
真埜「あ、そうだ」
京子「どうかした?」
真埜「これ貰った」ピラッ
海華「抽選券?」
このみ「商店街が出してるやつじゃないですか?」
真埜「そう。 お餅何個か買うと、1枚貰えるみたい」
海華「あー、この券に描いてある絵は見上餅か」
このみ「うわ、下手ですね。誰が描いたんでしょう」
京子「商店街の人じゃないの?」
海華「いや、そうだろうけど、これはもう餅じゃないでしょ。私、初見でレンガかと思ったわ」
京子「あなたも人のこと言えないでしょ」
海華「なにが」
京子「キリン描いたら、フォークだと思われたんでしょ?」
海華「ちょうど黄色い絵の具がなかったんだよ!」
京子「それ以前の問題でしょう、無機物だと思われてるんだから」
このみ「えーと、トイレットペーパー、商品券、洗剤、高級牛肉、土鍋、折りたたみ自転車、お掃除ロボット、炊飯器、温泉旅行、グアム旅行」
京子「意外とあるわね。どれかしら当たるんじゃない?」
海華「何が良いかなー」
海華「土鍋当ててさ、みんなで鍋パしようよ」
京子「いや鍋は準備できるでしょ。どうせなら、お肉当てましょう」
このみ「皆でグアムもいいですね」
京子「それは高望みしすぎじゃない?さすがに絵に描いた餅よ」
海華「お、上手い」
真埜「誰がやる?」
海華「じゃんけんに買った人にしよう」
鞠愛「幸薄いグループが勝っちゃったらどうします?」
海華「おみくじ結んだから大丈夫でしょ」
海華「じゃあ、やりますか」
一同「せーの、じゃんけんぽい!!」バッ
鞠愛「あ、勝った」
舞 「一人勝ちね」
海華「これは期待できるんじゃない?」
鞠愛「じゃあ、いきます」
鞠愛「私、このガラガラするやつ、やってみたかったんですよね」ガラガラ
一同「…………」ジー
鞠愛「♪~」ガラガラ
一同「…………」ジー
鞠愛「♪~」ガラガラ
鞠愛「お、出た」カラン
鞠愛「出たけど、2つ出ちゃった」
おじさん「あー、いいよいいよ。全然抽選会くる人おらんから!持ってけ持ってけ!」
鞠愛「え?本当ですか?」
おじさん「胡麻チーズ味の見上餅、買う人少ねえんだ」
海華「なるほどね」
このみ「なにがですか?」
海華「いや、さっきの抽選券、○個以上買うと貰えるんじゃなくて、胡麻チーズ味買った人が貰えるんだよ。全然売れないから、抽選券のサービスに利用したって訳だ」
このみ「それでも尚売れないってことですか……」
海華「このみが買い占めちゃえ」
鞠愛「それで、何が当たったんですか?」
おじさん「えーと、赤と緑だから……」
おじさん「お、おめでとう!」カランカラン
鞠愛「な、何ですか!?」
海華「肉か!?肉か!?」
おじさん「ほい、温泉旅行ペアチケット」ペラッ
一同「おー」
おじさん「それと、土鍋」ドサッ
一同「あー」
鞠愛「あ、ありがとうございます……!」
海華「じゃあ、京子と舞がトイレから戻ってきたら、カラオケに移動でいいかな」
このみ「そうですね」
海華「しかしなー、温泉旅行がペアチケットとは……」
海華「まあ、さすがに全員分は絵に描いた餅か」
このみ「それハマったんですか」
鞠愛「じゃあ、これは、お餅買ってきてくれた真埜さんに」ペラッ
真埜「要らないわ」
鞠愛「え?」
真埜「行く相手いない。それに私タトゥー入ってるから、厳しいと思う、温泉は」
鞠愛「タトゥー!?」
真埜「理由があって、一身上の」
海華「お餅の絵のタトゥーだよ」
このみ「そうなんですか!?」
海華「嘘だよ」
このみ「そうですか……」
鞠愛「じゃあ、胡麻チーズ大好きこのみちゃんに」ペラッ
このみ「いいよ」
このみ「鞠愛ちゃんが引いたんだもん。鞠愛ちゃんが貰って」
鞠愛「えー?本当に、いいの?」
このみ「行きたい相手、いるでしょ?」
鞠愛「……うん」コクッ
京子「ただいま」
舞 「お待たせしました」
海華「よーし、戻ってきたね」
京子「行きましょうか」
一同「おー!」スタスタ
鞠愛「……」
舞 「……鞠愛?」
鞠愛「……」
舞 「何してるの、行くわよ」
鞠愛「舞ちゃん」
舞 「何」
鞠愛「あの……」
舞 「だから何」
鞠愛「お、おお、温泉旅行……その、い、一緒に、行きたい、な、って……」
舞 「」
舞 「はあ、なに今更になって恥ずかしがってんのよ……」
舞 「良いわよ」
鞠愛「だよね、やっぱダメだよね」
舞 「いや、良いわよ」
鞠愛「そうだよね、今日いっぱい迷惑かけちゃったもんね」
舞 「だから、良いって」
鞠愛「無理だよね……」
舞 「鞠愛!」ガシッ
鞠愛「!!」ハッ
舞 「良いって言ってるでしょ……」
鞠愛「」
舞 「」
鞠愛「え?いいの!?」パアァ
舞 「そう言ってるじゃない……」
鞠愛「なんだー、私てっきり断られるかと思っちゃったよー」ツー
舞 「……鞠愛?」
鞠愛「ん?何?」ツー
舞 「なんで、泣いてんの」
鞠愛「へ?」ポロポロ
鞠愛「あれ?」ポロポロ
鞠愛「なんでだろう!分かんない!」ポロポロ
舞 「怖いわよ……」
鞠愛「安心したからかな」
舞 「安心?」
鞠愛「舞ちゃんがオッケーしてくれたから」
舞 「は?それだけ?」
舞 「別に、鞠愛と買い物行ったりとか、映画も行ったことあるでしょう」
鞠愛「でも、あれは結局、皆一緒だったし」
鞠愛「こうやって、私が誘って、2人でどっか行くの初めてだから」
舞 「あ……、そう」
鞠愛「これってさ、デートにカウントしてもいい?」
舞 「勝手にすれば」
舞 「さ、行くわよ」スッ
鞠愛「えっ、ちょっと待ってよー」
舞 「早くしないと、皆に置いてかれるわよ」
鞠愛「あー、舞ちゃん」
舞 「何?」
鞠愛「土鍋持ってくれない? 重いんだよね」
舞 「自分が当てたんでしょ、自分で持ちなさいよ」
鞠愛「そんなー! じゃあ、蓋だけでもいいからさー」
舞 「何言ってんの、蓋とセットじゃなきゃ意味ないじゃない」
鞠愛「もうー!」
舞 「あ、鞠愛」
鞠愛「なに?」
舞 「温泉旅行って、何泊?」
鞠愛「えーとね、んー、忘れちゃった。後で見ておくよ」
舞 「……そう」
1話完